独占禁止法(シラバス 法律・倫理5)
学習目標
AIやデータを使った事業活動が独占禁止法のどの規制にかかわるかを理解し、価格設定アルゴリズムによる価格の同調、プラットフォーム事業者によるデータの収集や検索順位の操作などの事例で、競争制限と公正競争阻害性のどちらが問題になるかを判断できるようにします。
要点
まず「単独か、共同か」で分ける
独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、公正で自由な競争を守るための法律で、公正取引委員会が運用します。事例問題で迷ったら、最初に「1社の行為か、複数社の行為か」を確かめ、次に下の表のどれに当たるかを考えます。
| 禁止行為 | 典型例 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 私的独占(2条5項) | 有力な事業者が他社を排除したり支配したりする | 競争の実質的制限 |
| 不当な取引制限(2条6項) | 競合どうしの価格カルテル、入札談合 | 競争の実質的制限 |
| 不公正な取引方法(2条9項) | 抱き合わせ販売、取引妨害、優越的地位の濫用 | 公正競争阻害性 |
2つのキーワードの違い
- 競争制限:条文では「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」と書かれます。市場の競争が弱まり、特定の事業者がある程度自由に価格などを左右できる状態を生むことです。私的独占と不当な取引制限の要件です。
- 公正競争阻害性:条文では「公正な競争を阻害するおそれ」と書かれます。不公正な取引方法の要件で、「おそれ」で足りるため、市場を支配するほどの影響が出る前の段階でも規制の対象になります。
AIとデータで問題になる場面
- 価格設定アルゴリズム:競合どうしが「AIで価格を一定以上にそろえる」と合意していれば、価格の決定をAIに任せていてもカルテルです。合意を実行する手段がAIだというだけで、責任を負うのは事業者です。一方、意思の連絡がないまま、各社のAIが互いの価格に反応して価格が高止まりする状態をどう扱うかは、議論が続いている論点です。
- 検索順位の操作:プラットフォーム事業者が、検索結果やおすすめの順位で自社の商品を不当に優遇すると、競合事業者の取引を妨げるとして問題になりえます。公正取引委員会の2021年の報告書は、価格設定のアルゴリズム、ランキング、パーソナライゼーションを主な検討対象にしています。
- データの集積:消費者がサービスを使うために不利益な条件を受け入れざるを得ない場合、プラットフォーム事業者は消費者に対して優越的地位にあるとされます。その立場を利用して、利用目的の達成に必要な範囲を超え、消費者の意に反して個人情報などを取得すると、優越的地位の濫用に当たりえます。
- 生成AI:公正取引委員会は生成AIの市場も実態調査しています。2025年6月にver.1.0、2026年4月にver.2.0の報告書を公表し、生成AIの市場で独占禁止法上問題になりうる論点を整理しています。
単独の価格設定は原則自由
需要に応じて価格を上下させるダイナミックプライシングを1社が単独で行うことは、原則として自由です。問題になるのは、不当廉売や差別対価など、不公正な取引方法の類型に当たり、公正競争阻害性がある場合です。
G検定で問われる深さ
課徴金の計算方法や、不公正な取引方法の細かな類型まで覚える必要はありません。3つの禁止行為の違い、「競争を実質的に制限」と「公正な競争を阻害するおそれ」の違い、AIに判断を任せても事業者の責任は変わらない点を押さえれば十分です。
つまずきやすい点
- 競争制限(一定の取引分野における競争を実質的に制限すること)は私的独占と不当な取引制限の要件、公正競争阻害性(公正な競争を阻害するおそれ)は不公正な取引方法の要件で、後者は市場全体への影響が小さい段階でも問題になりうる点
- 価格をAIが決めていても、事業者どうしに意思の連絡があればカルテルになる一方、各社が独自に他社の価格を参考にした結果として価格が似通っただけでは、通常は不当な取引制限に当たらない点
- 優越的地位の濫用は事業者どうしの取引だけでなく、デジタル・プラットフォーム事業者が消費者から個人情報などを取得する取引にも適用されうる点
シラバスのキーワード
練習問題
出典と作成について
作成:ウカトレ編集部(AIで作成し、別のAIが一次資料と照合。手順は編集方針)
最終更新日: 最終確認日:
法令・ガイドライン等は2026年10月30日時点の内容にもとづきます。
対応シラバス:シラバス第1.4版 法律・倫理5
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版(法律・倫理分野 項目5 独占禁止法)2026年10月30日閲覧
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(1条、2条5項・6項・9項、3条、19条)2026年10月30日閲覧
- 公正取引委員会「デジタル市場における競争政策に関する研究会 報告書『アルゴリズム/AIと競争政策』について」(2021年3月31日)2026年10月30日閲覧
- 公正取引委員会「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(2019年12月17日公表)2026年10月30日閲覧
- 公正取引委員会「生成AIに関する実態調査報告書ver.2.0について」(2026年4月16日)2026年10月30日閲覧