深層強化学習(シラバス 技術29)
学習目標
強化学習とディープラーニングを組み合わせた深層強化学習について、DQNとその改良手法、学習を並列化・分散化する手法、ゲームでの成果を理解し、ロボット制御や大規模言語モデルの調整など実世界で使うときの課題と対策を説明できるようにします。
要点
DQNと改良手法
深層強化学習は、強化学習にディープラーニングを組み合わせた手法です。DeepMindのDQNは、Q学習で求める行動価値(Q値)をCNNで近似し、Atariのゲーム画面の画素から直接プレイを学びました。過去の経験をためて使い回す経験再生と、目標値を安定させるターゲットネットワークが学習を支えています。
| 手法 | 改良点 |
|---|---|
| ダブルDQN | 行動の選択と評価を別のネットワークで行い、Q値の過大評価を抑える |
| デュエリングネットワーク | Q値を、状態の価値と、行動ごとの有利さに分けて推定する |
| ノイジーネットワーク | 重みに学習できるノイズを加え、ε-greedy方策に代わる探索を行う |
| Rainbow | 上の3つを含む6つの改良をまとめて組み込む |
学習の並列化と分散化
- A3C:複数のエージェントが、それぞれ環境のコピーで並列に行動し、非同期に共通のネットワークを更新するActor-Criticの手法です。
- APE-X:多数のアクターが集めた経験を共有のメモリにため、学習役は重要度の高い経験を優先して学習します。
- Agent57:2020年にDeepMindが発表しました。分散型の学習に、探索の度合いを自動で切り替える仕組みを加え、Atariの57種類のゲームすべてで人間の基準スコアを上回りました。
行動が連続値の課題
DQNは、ボタンの選択のように行動が有限個の課題向けです。ロボットの関節の角度のような連続値制御では、行動を出す方策を直接学ぶ手法が使われます。PPOは、方策を一度に大きく変えないように更新幅を制限し、学習を安定させた手法です。
ゲームでの成果とマルチエージェント
マルチエージェント強化学習(MARL)は、複数のエージェントが同じ環境で協力や競争をしながら学ぶ設定です。
- アルファスター(AlphaStar):DeepMindが開発し、StarCraft IIで最上位のグランドマスターの水準に達しました(2019年)。
- OpenAI Five:5対5で戦うDota 2で、2019年に世界王者のチームに勝ちました。PPOを大規模に使っています。
実世界で使うための課題と対策
| 課題 | 対策 |
|---|---|
| 実機で試行を重ねるのは危険で時間もかかる | sim2real:シミュレータで学習してから実機に移す |
| シミュレータと現実の差 | ドメインランダマイゼーション:照明や色、摩擦などの条件をランダムに変えて学習する |
| ゼロから学ぶと効率が悪い | 残差強化学習:既存の制御の出力に、強化学習で学んだ補正を足す |
| 新たな試行ができない | オフライン強化学習:集めておいたデータだけで学習する |
| 画像などの観測は次元が高い | 状態表現学習:観測から低次元の状態の表現を学ぶ |
| 報酬がまれで学習が進まない | 報酬成形:目標に近づいたら報酬を与えるなど、報酬を設計し直す |
RLHFは、人間が応答を比べた評価から報酬モデルを作り、PPOなどの強化学習で、大規模言語モデルの出力を人間の好みに近づける手法です。
G検定で問われる深さ
各手法がDQNの何を改良したか、どのゲームで成果を上げたかを一言で言えること、実世界で使うときの課題と対策の組み合わせを選べることが中心です。Q値の更新式、方策勾配の導出、各手法のハイパーパラメータまでは不要です。
つまずきやすい点
- ダブルDQNはQ値の過大評価を抑える手法、ノイジーネットワークは探索を促す手法、デュエリングネットワークは状態の価値と行動ごとの有利さに分けて推定する手法で、改良の目的がそれぞれ違う点
- A3CやAPE-Xは同じ課題を多数の環境のコピーで並列に学習する手法であり、複数のエージェントが同じ環境で協力や競争をするマルチエージェント強化学習とは別物である点
- DQNは行動の選択肢が有限個の課題向けで、ロボットの関節の角度のように行動が連続値になる課題には、方策を直接学ぶPPOなどの手法が使われる点
- オフライン強化学習は、環境と新たにやり取りせず、集めておいたデータだけで学習する点。シミュレータで学習してから実機に移すsim2realとは異なる
シラバスのキーワード
A3C、Agent57、APE-X、DQN、OpenAI Five、PPO、Rainbow、RLHF、sim2real、アルファスター(AlphaStar)、オフライン強化学習、残差強化学習、状態表現学習、ダブルDQN、デュエリングネットワーク、ドメインランダマイゼーション、ノイジーネットワーク、報酬成形、マルチエージェント強化学習(MARL)、連続値制御
練習問題
混同しやすい用語
この項目の関連用語
出典と作成について
作成:ウカトレ編集部(AIで作成し、別のAIが一次資料と照合。手順は編集方針)
最終更新日: 最終確認日:
対応シラバス:シラバス第1.4版 技術29
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版(技術分野 項目29 深層強化学習)2026年10月30日閲覧
- Volodymyr Mnih et al., Human-level control through deep reinforcement learning, Nature 518, 529–533 (2015)2026年10月30日閲覧
- Hado van Hasselt, Arthur Guez, David Silver, Deep Reinforcement Learning with Double Q-learning (2015)2026年10月30日閲覧
- Ziyu Wang et al., Dueling Network Architectures for Deep Reinforcement Learning (2015)2026年10月30日閲覧
- Meire Fortunato et al., Noisy Networks for Exploration (2017)2026年10月30日閲覧
- Matteo Hessel et al., Rainbow: Combining Improvements in Deep Reinforcement Learning (2017)2026年10月30日閲覧
- Volodymyr Mnih et al., Asynchronous Methods for Deep Reinforcement Learning (2016)2026年10月30日閲覧
- Dan Horgan et al., Distributed Prioritized Experience Replay (2018)2026年10月30日閲覧
- Adrià Puigdomènech Badia et al., Agent57: Outperforming the Atari Human Benchmark (2020)2026年10月30日閲覧
- John Schulman et al., Proximal Policy Optimization Algorithms (2017)2026年10月30日閲覧
- Oriol Vinyals et al., Grandmaster level in StarCraft II using multi-agent reinforcement learning, Nature 575, 350–354 (2019)2026年10月30日閲覧
- OpenAI et al., Dota 2 with Large Scale Deep Reinforcement Learning (2019)2026年10月30日閲覧
- Josh Tobin et al., Domain Randomization for Transferring Deep Neural Networks from Simulation to the Real World (2017)2026年10月30日閲覧
- Tobias Johannink et al., Residual Reinforcement Learning for Robot Control (2018)2026年10月30日閲覧
- Sergey Levine, Aviral Kumar, George Tucker, Justin Fu, Offline Reinforcement Learning: Tutorial, Review, and Perspectives on Open Problems (2020)2026年10月30日閲覧
- Timothée Lesort et al., State Representation Learning for Control: An Overview (2018)2026年10月30日閲覧
- Long Ouyang et al., Training language models to follow instructions with human feedback (2022)2026年10月30日閲覧